福島市野田町の山田歯科の山田康友です。
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は、虫歯と並ぶもうひとつの病気であるに歯周病について書いていきます。
虫歯と比べると、やや複雑ですので、また長くなってしまいますがお付き合い頂ければと思います。
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先日、歯にくっついてしまった菌の塊(バイオフィルム)の中には
歯周病菌も存在しているということを書きました。
菌が歯にくっついたままの状態が続きますと、
約2~3週間で菌に接した歯茎が腫れてくるようになります。
これは、歯周病菌がもつ毒素により、生体が炎症反応を起こすことが原因です。
(例えば、ハチに刺されると腫れてしまうのと同じ生体反応です。)
生体は、毒を体の中には入れたくありませんので、
毒を食べてくれる細胞(白血球)をたくさん出してきます。
白血球は、血液の一成分ですので、白血球が増えるということは血流が増えるということになります。
血流が増えると、普段は細い血管が膨らんできて、血管壁が薄く引き伸ばされ破れやすくなってしまいます。
ですから、歯周病になると、歯ブラシ等の簡単な刺激で、血管が破れてしまい血が出てしまうのです。
(水風船が、水をいれていくといつかわれてしまうようなイメージです)
ちなみに、歯科医院でよく行われるポケット検査では、
我々はポケットの深さとともに出血の有無も診ています。
これにより、歯磨き時の出血よりも、はやく歯周病の有無を見つけることができます。
まとめますと、
歯周病菌が歯につく
↓
歯茎に炎症が起こる(血管拡張)
↓
血管が破れて出血しやすくなる
となりますので、
歯磨きやポケット検査で出血があるということは、
その部分に歯周病菌がいる(=歯周病にかかってしまっている)という証拠になります。
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炎症が歯茎の中だけにある状態を「歯肉炎」と言います。
この段階では、歯を支える骨は溶けていませんので、
菌をとってあげさえすれば、完全にもとの健康な状態に戻ります。
(理論的には、歯ブラシだけでも治せます)
しかしこのまま放置してしまいますと、次第に歯を支える骨が溶けていってしまいます。
この状態を「歯周炎」といいます。
骨が溶けた分、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯茎の溝が深くなっていきます。
歯周ポケットは、数が多くて、深いほど、より多くの菌をため込んでいってしまいます。
(洋服のポケットは、数が多くて深いほど収納力があって便利ですが、逆ですね・・・)
さらに歯周病菌は、嫌気性菌と言って酸素が嫌いな菌ですので、
酸素が届きにくい所(=より深いポケット)へ入り込んでいきます。
この段階以降では、歯ブラシだけでは対応することはできず、
歯科医院で歯周病の治療を受けなくてはいけません。
治療としては、局所麻酔下で、ポケットの中(特に底)を清掃する必要があります。
(ポケット検査でもチクチク痛みがあると思いますので、麻酔なしではこの処置は難しいでしょう)。
さらに、歯周病が進行していきますと、歯茎が下がってきたり、歯が揺れてくるようになります。
膿がでたりしてきて、歯槽膿漏と言われる状態になります。
この段階での治療は、歯肉切開を含む外科処置や、
揺れてしまった歯でしっかり咬めるようにするために被せもので固定する
などの複雑な処置が必要になります。
骨がどんどん溶けていって、歯根を支える骨が先端まで完全に溶けてしまうと、
残念ながら、現在の医学では歯の保存は不可能になり抜歯をしなければなりません。
ただ、逆の言い方をすれば、少しでも歯根と骨がくっついていれば、
その歯は救える可能性があります。
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歯周病によって溶かされてしまった骨は、
治療を行ったとしても元通りに回復するのは大変難しいです。
ですので、できれば歯肉炎の段階で早期発見し、
歯周炎へと進行させないような予防処置が重要になります。
イラスト(断面図)ですと、骨の吸収程度が分かりますが、
外見からは、歯肉炎であっても歯周炎であっても歯茎が腫れているとしか見えません。
歯肉炎なのか歯周炎なのか、歯周炎ならば、中度なのか重度なのかによって治療方針が変わってきます。
歯周病で心配な方は歯周病専門医を受診されるとよいでしょう。