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スウェーデン式の歯科治療とは(その1)

福島市野田町にある山田歯科の山田康友です。

6月の開院に向けて準備を進めております。

 

皆さんは、スウェーデンと聞くと何を思い浮かべるでしょうか?

雄大な自然や、おしゃれな北欧家具や雑貨、IKEAやVOLVOなどの世界的メーカーでしょうか。

実は、スウェーデンは歯科界ではかなり先進的な国家でもあります。

歯周病治療、歯周組織再生療法、インプラントなど、スウェーデンでの発明や研究なくしては、いまの歯科医療は成り立たないと言ってもいいくらいです。

私は、研修医の時からの恩師の先生が、スウェーデンに留学されており、スウェーデンの歯科治療を実践しておられたので、大きな影響を受けきました。

私なりの解釈も入ってしまいますが、私の考えるスウェーデン式歯科治療のポイントは以下の3点です。

 

1,「ありのまま」の価値観

2,保険治療

3、広範囲のブリッジを用いた歯周病治療

ひとつずつ詳しくご説明をしていきます。

 

 

1、ありのままの価値観

 

歯科大では、アメリカに留学される先生が圧倒的多数派でヨーロッパに留学される先生は少数派のため、わが国における歯科教育はアメリカ式が多いように思います。かなり大雑把に言えば、アメリカでは理想と言われる形に人工的に作り変える医療が行われており、スウェーデンを含むヨーロッパではご本人が気になっていないなら(食べたいものがなんでも食べられて、見た目も気にならないのであれば)多少の不具合はありのまま受け入れようという価値観があるように思います。(どちらがよくて、どちらが悪いという話ではありません。)不具合を放置というと、悪く聞こえるかもしれませんが、不具合に困った段階で治療すればいいだけの話です。私は、偶然ではありますが(振り返ってみれば大変幸運なことに)歯学部を卒業したばかりの状態でスウェーデン式の医療に接することができました。そして「ありのまま」という概念は、われわれ日本人の価値観ととても合うのではないかと感じました。

歯科界の「聖地」スウェーデン・イエテボリ大学

 

例えば、奥歯がなくなってもそのままにしている方や、歯並びの乱れがある方は意外に多いのではないでしょうか?アメリカ式の考えでは、理想的は状態から外れていると見做されるので、失った歯は再建し、歯列矯正をすべきと考えられるかもしれません。ただしいずれの場合でも、お食事はしっかりできている場合が多いと思います(お食事ができていない場合や見た目が気になる場合は治療した方がいいと思います)。このような方には果たして治療は絶対に必要なのでしょうか?歯がなくなったままだと、周囲の歯が移動してくるとよく言われますが、統計学的に言えば、移動しない方も大勢いらっしゃいます。また歯並びの乱れがあると虫歯や歯周病になるとよく言われますが、これも菌がたまりやすい場所を重点的に磨くか、歯科医院でメインテナンスすればリスクは相当下げられるでしょう。実は、このような不具合はご本人が困っていないのなら、あえて歯科治療(体に不可逆的な侵襲を与える行為で元通りには戻せません)を行う根拠に乏しいので、スウェーデン式ではそのまま置いておくことも選択肢の一つになります。

 

一方で、スウェーデンにおいても「ありのまま」では絶対にいけない状態があります。虫歯や歯周病などの炎症です。これらをありのままにして放置しておくと進行して悪化してしまうからです。スウェーデンのとある教科書の序文に「絶対的に必要なこと以上は何もするな、しかし絶対的に必要なことは怠ってはいけない」という一文があります。この絶対的に必要なことが、病気を治療することなのです。この病気をとるという段階では、科学的根拠に基づくゴール(目標)へ向けて徹底的な感染除去を行っていきます。明確な科学的根拠がありますので、選択肢があまりありません。しかし次の段階では、できるだけ患者さんのQuality of life(クオリティ オブ ライフ・生活の質)が高くなるような再建治療をご相談していきます。この段階では、患者さんごとの「ありのまま」の状態から歯科医学的に「理想的」と言われる状態までのどの状態にしていくかという複数のゴールが生じてきます。当院では、絶対的に必要なこと(=虫歯や歯周病の予防・治療)を重点的に行い、歯の形やかみ合わせについては、患者さんの「ありのまま」に寄り添いながら、患者さんごとに歯科治療の方針をご提案して参ります。

 

(次回に続く)