You are currently viewing 歯石とりに麻酔は必要か?

歯石とりに麻酔は必要か?

当院は中程度以上の歯周病と診断された方は、部分麻酔をして歯周病治療(いわゆる歯石取り)を行っていきます。中には、いままで麻酔をして歯石取りをされたことがないと驚かれる方もいらっしゃいます。ただ、歯周病治療も、虫歯治療と同じく、からだの内側を触りますので麻酔が必要になります。今回は、なぜ歯石取りをするのに麻酔を使用するかを書いていきます。

 

歯周病の治療の目的は、歯周病菌の数を可能な限り減らしていくことです。具体的には、歯周病菌の住処になる歯石を取ったり、虫歯の穴を埋めたり、段差のある詰め物や被せ物の形を修正したりしていきます。特に「歯周病治療=歯石取り」というイメージがあると思いますが、歯石は顕微鏡下でみると非常に凸凹がありますので、莫大な歯周病菌の住処になります。菌にとっての高層マンションというレベルでなく、街くらいのイメージです。歯石が付いている限りは、四六時中、歯を支える骨を溶かしていることになりますので、一刻も早く取り除いた方がよいと思います。

●麻酔なしでの歯茎の中の歯石取りをするということは、耳あたりはいいですが・・・

歯茎よりも上についている(=目でみえる)歯石をとる場合は、麻酔は必要ありません。まれに知覚過敏症状が非常に強い方には麻酔をすることもありますが、いわゆる「クリーニング」という感覚でよいと思います。一方で、歯茎の下(=目でみえない)の歯石を取る場合は麻酔を必要になります。神業をもつ先生でしたら、無麻酔で歯石を取り除けるのかもしれませんが、少なくとも当院では難しいです。神業をもつ先生でも、麻酔をしたほうが麻酔をしなかった場合よりも歯石はより多くとれるのは間違いありません。そもそもポケット診査(0.4mmの先端が丸くなった物差しをつかいます)でもチクチクするのに、歯石を取るには先端が1mmの先が刃になった器具を入れなければいけませんのでより痛みやすいです。こちらは、完全に「治療」というイメージです。

(図:歯茎の下への治療中の写真)

ちなみにですが、重度の歯周病の方の場合、歯石取りを歯茎の上下で分ける医学的な必要性はあまり感じません。一刻も早く歯周ポケット内(一番大事なのは底の部分)を清掃したほうがよいですが、現状の健康保険制度では、歯茎よりも上と下の歯石取りは別に分けなければいけません。当院では、歯茎の上を歯石取りでご来院をしていただく際に歯ブラシの効率的な使用法をご説明しています。歯ブラシは、治療期間中はもちろん、治療終了後(メインテナンス中)も頑張って頂きたいです。麻酔をして歯石取りをするのは2回目以降になります。

(図:歯茎の上への治療中の写真)

歯石取りに麻酔を使うかは学問的にも議論があるところです。菌は歯石表面にしかついていないのでやさしく洗うだけで炎症は治まったという有名な研究もあります。しかしながらこの研究は、あくまで実験的な環境で行われた特殊な治療結果です。洗ってその時はきれいになったとしても歯石(=空き家)が残っていたらまた菌が住み着いてしまうでしょう(歯周病の再発リスクが格段に上がるということです)。実際に治療する上では、麻酔をして歯石を徹底的に取り除くことが重要だと考えております。損得の話ではありませんが、麻酔の有無で治療費は変わりません。話はずれますが、抗生剤による歯周病治療も、同様な理由で歯石を取り除く従来の歯周病治療と併用したほうがよいと思います。

 

当院に通っていただく価値は、ご自分では取り切れない菌をとることです。ご自分でも磨けるところを、当院で再度磨いても意味がないとはいいませんが効果は薄いでしょう。テレビCMでは、いかにも歯ブラシの毛先がポケットの底まで届く様なイメージ図を使用していますが、あくまでイメージです(よく見ると一瞬ですが、画面にこれはイメージ図ですと注意書きが表示されるはずです)。さらに言えば、歯ブラシが歯周ポケットの底に届くことと、実際に菌が取れることは別問題です。歯周ポケット検査の意味は、歯周病の状態を知ることとどのくらい深さ(実際は面積)を歯周病治療すべきかをしることです。ポケット検査の結果、深いポケットが見つかったけれども、治療しないのはもったいないと思います。歯周病はすぐには起こりません。多くの場合、長い年月をかけて進行していきます。治療をするのは時計の針は一気に逆回しをしないといけないので、どうしても多少の「痛み」が伴ってしまいます。なるべく麻酔がいたくないように、極細の注射針を使ったり、表面麻酔薬を使用したり工夫しています。したがいまして、当院では歯周病をなくすために、麻酔下での歯周ポケット内部の歯石取りをお勧めします

author avatar
ydcf_staff