福島市野田町にある山田歯科の山田康友です。
6月の開院に向けて準備を進めております。
前回に続いてスウェーデン式の歯科治療について書いていきます。
スウェーデン訪問時イエテボリ(ヨーテボリ)市庁舎前にて(2016年)
スウェーデンの歯科治療の2つ目の大きな特徴は、わが国と同じ保険診療制度があるということです。保険診療は公的なお金を使うという性質上、費用対効果(コストパフォーマンス、いわゆるコスパ)がいい治療が求められます。スウェーデンは人口約1000万人の国家で、高負担高福祉型の医療保障制度が実施されています。しかしながら、いくら高福祉といっても財源に限りがあるので、できるだけ効率がいい、同じ効果があるなら安価でシンプルな医療行為が優先されます。また国民も自分たちが支払った税金がどのように自分たちに還元されているかをしっかりと監視しているそうです。
ではどのように保険制度を整備していったのでしょうか。ビジネス用語に「PDCAサイクル」というものがあります。Plan(計画)→Do(実行)→Check(検証)→Action(改善)の手順を繰り返し、質をどんどん高めていくというものです。スウェーデンの医療も同じように、長期臨床研究に裏打ちされた臨床を実践し、結果を評価し、新たな疑問を研究によって探求していくというサイクルが延々と行われています。これにより科学的根拠が疑わしい治療はなくなっていき、コスパの悪い治療は、より効率のよい治療に置き換わっていくのです。こうした結果はガイドラインとして整備され、インターネットで国民にも公開されています。国民(患者さん)の側も、どの治療が標準的な治療なのかが分かりやすくなり、治療方針を決める際、どの治療を選択すべきかを考えやすくなるメリットがあります。
スウェーデンでは、インプラントもセラミックの歯も保険適用です。ただし、もちろん何も制限がないわけではありません。例えば、大臼歯部でのインプラント治療は、もちろん咬めるようにはなりますがコスパはよくない(インプラント治療をしなくても”理論的には”咬めるのであえて公的な財源を使わなくてもよい)と見做され、保険適応外になるようです。このように保険治療は、その性質上、効果的で、最大限の恩恵をほどほどのコストで受けられるという治療に落ち着くと言えます。また歯科治療のやり直しは、虫歯や歯周病が原因と分かっていますので、虫歯や歯周病を予防できれば、歯科治療のやり直しは減っていきます(専門的には2次予防と言います)。もっと言えば、そもそも病気にならないように予防することが一番大事でしょう(1次予防といって本当の意味での予防です)。日本では、残念ながらインプラントやセラミックなどのリハビリテーション分野は保険適応外になります(眼科でもメガネは保険がききませんよね)が、虫歯や歯周病などの病気の治療はほぼ保険でカバーされています。日本も国民皆保険制度を持つことを考慮すると、費用対効果を追求し、必要以上の治療はしないという「スウェーデン型」の治療コンセプトはとても参考になると思います。
信夫山の展望台から福島市内を見た風景です。
医院も大分出来上がってきました。
皆様にお会いできますことを楽しみにしております。